この講座の対象者は以下の方を想定しています。
- 数学は中学レベルしか分からないけど統計検定2級に合格したい
- どの参考書を見ても数式だらけで理解できない
- 独立試行ってなに?
- $nCr$とか$nPr$とかってどうやって計算するの?
この講座では特に、0の状態から統計検定2級に合格したいって方のために、分かりやすさをモットーに解説していきます。
今回は確率の中級編として、独立試行と反復試行です。
それではいきましょう!
独立試行とは?

独立試行とは、互いに影響を与えない試行のことです。
たとえば、サイコロを 1 回振る試行と、サイコロを 2 回振る試行は、互いに独立した試行です。
サイコロを 1 回振る結果が、サイコロを 2 回振る結果に影響を与えることはありません。
くじの場合ですと、A君が引いたくじを戻してからB君がくじを引くと、それは独立試行です。
しかし、A君がくじを戻さなかった場合、そのくじ1枚分が減る事により、確率が変わってしまうので、独立試行ではありません。
独立試行の積の法則
「サイコロを2回振って2回とも1が出る確率」のように、試行を複数回行った時の確率を求めるのに独立試行の積の法則を使います。
公式は↓です。
$P(AかつB) = P(A) × P(B)$
簡単ですね!掛け算をすれば良いだけです。
例えば、A君とB君がサイコロを投げて、2人とも1が出る確率を求めてみましょう。
説明するまでもないですが、1がでる確率は$\frac{1}{6}$ですね。
$P(AかつB) = \frac{1}{6} × \frac{1}{6} = \frac{1}{36}$
このように、$\frac{1}{36}$と求める事が出来ました。
反復試行とは?
先ほどの、「サイコロを2回投げる」のように、同じ試行を繰り返し行う事を、反復試行(はんぷくしこう)といいます。
もちろん、反復試行の各試行は独立です。
ここで難しくなってくるポイントとして、例題をひとつ。
「サイコロを10回投げて、そのうち3回6がでる確率はいくつでしょう?」
ちょっと難しくなってきましたね!
これを解く前に、いくつか学ぶ必要があります。
それが、↓の2つです。
- 順列
- 組合せ
順列とは?
例えば、A君、B君、C君、D君、E君の5人がいます。
この5人の中から運動会のリレーに3人出場します。
走る順番も固定で決めるものとします。
この条件のもと、何パターンあるか求めてみましょう。
- まずは第一走者は、5人の中から一人を選ぶので5通りあります。
- 次に第二走者は、4人の中から一人を選ぶので4通りあります。
- 最後にアンカーは、3人の中から選ぶので3通りあります。
以上から、5人の中から3人を順番に選ぶには↓だけのパターンがあります。
$5×4×3 = 60$
この様にして、60通りある事が分かります。
これが順列の求め方です。
特に大事なポイントとしては、ただ3人を選べば良いのではありません。
順番を考慮して選ぶ事が順列の条件です。
順列の公式
$nPr=\frac{n!}{(n-r)!}$
この公式を使えばすぐに求められますが、初見では意味が分からないですよね?
ひとつずつ解説します。
まず$nPr$の記号の意味です。
- $P$:順列を意味する
- $n$:全体の個数。今回は5人を意味しますので5が入ります。
- $r$:選択する個数。今回はリレーに出場する3人の3が入ります。
- $!$:階乗を意味します。
階乗ですが、まず$3!$の場合を見てみましょう。
$3! = 3×2×1=6$
このように、$n!$で$n$に入っている値から$-1$した値を順々に掛けていく事を階乗と言います。
では先ほどのリレーのパターンを、公式を使って求めてみます。
${}_5 P_3 = \frac{5!}{(5-3)!}=\frac{5×4×3×2×1}{2×1}=60$
この様にする事で求める事ができます。
ちなみにもっと簡略化して求める場合は、${}_5 P_3$の場合、5から-1しつつ、3回掛けていけば求められます。
$5×4×3=60$
ですので、${}_n P_r$がでてきたら、$n$から$r$までの数字を一つずつ掛けていけば良いだけです。
組合わせとは?
組合せは、順番を考慮せずに選択する事です。
先ほどのリレーの場合、順列ですと走る順番も決めていましたが、組合せの場合は順番を気にしません。
今度は徒競走に出場するイメージですね、出場者を3人選ぶので順番はありません。
そこで何が変わるのかと言う事ですが、順列の場合はA君、B君、C君が走るとなったら、その三人の走る順番のパターンだけでも以下の6通りあります。
- [A, B, C]
- [A, C, B]
- [B, A, C]
- [B, C, A]
- [C, A, B]
- [C, B, A]
しかし、組合せの場合は順番を考慮しないので1通りだけです。
ここが順列との大きな違いです。
組合せの公式
${}_n C_r=\frac{{}_n P_r}{r!}$
組合せを求める場合はこの公式を使います。
5名の中から徒競走に出る5人を選ぶには、
${}_5 C_3=\frac{{}_5 P_3}{3!}=\frac{5×4×3}{3×2×1}=\frac{60}{6}=10$
この様にして、10通りと求められました。
覚えておきたい組合せの公式
組合せでは計算を楽にしてくれる公式が2つあります。
是非覚えておいてください。
- ${}_n C_r={}_n C_{n-r}$
- ${}_n C_0={}_n C_n=1$
①の意味としては、${}_{10} C_8$求める場合${}_{10} C_2$としても結果は一緒になります。
$\frac{10×9×8×7×6×5×4×3}{8×7×6×5×4×3×2×1}$としても、8~3までは約分して消えてしますので、結果$\frac{10×9}{2×1}$となりますので、${}_{10} C_2$で計算してOKなのです。
また②においては、${}_{10} C_0$や${}_{10} C_{10}$の場合、0ではなく1になりますので注意してください。
反復試行の確率の求め方
ここで話しを最小に戻して、「サイコロを10回投げて、そのうち3回6がでる確率はいくつでしょう?」の求め方を見ていきましょう。
反復試行の確率を求める公式
反復試行の確率を求めるには、一般に、ある試行で事象$A$の起こる確率が$p$であるとき、この試行を$n$回繰り返した時に事象$A$が$k$回起こる確率は、次の式で求められます。
${}_n C_k (p)^k(1-p)^{n-k}$
まずは、「サイコロを10回投げて、3回6が出る」場合の数字を記号に当てはめて考えてみましょう。
- $p$:事象A(6がでる)が起こる確率
- $n$:試行回数
- $k$:事象Aが起きる回数。今回は3
- $n-k$:試行回数-事象Aが起きる回数
${}_{10} C_3 × (\frac{1}{6})^3(1-\frac{1}{6})^{10-3}$
$={}_{10} C_3 ×(\frac{1}{6})^3(\frac{5}{6})^{7}$
$=120 ×(\frac{1}{216})(\frac{78125}{279936})$
$=120 ×(\frac{1×78125}{216×279936})$
$=120 ×0.00129204=0.155…..$
この様にして、$0.155$と求める事ができました!
練習問題
①
答え:30
順列ですので、以下の式で求められます。
${}_6 P_2=6×5=30$
②
答え:15
順番を考慮しないので、組合せで求められますね。
${}_6 C_2 = \frac{6×5}{2×1}=15$
③
答え:0.16
公式にあてはめて、以下の様に計算できます。
${}_5 C_2 ×(\frac{1}{6})^2(\frac{5}{6})^3$
$=10 ×\frac{1^2×5^3}{6^2×6^3}$
$=10 ×\frac{5^3}{6^5}$
$=\frac{1250}{7776}=0.16$

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