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母分散の区間推定のやり方【0から始める統計検定2級講座㉖】

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この講座の対象者は以下の方を想定しています。

  • 数学は中学レベルしか分からないけど統計検定2級に合格したい
  • どの参考書を見ても数式だらけで理解できない
  • 母分散の推定ってどうやるの?
  • 母平均が分かっている場合と分からない場合で推定の方法が違うの?

この講座では特に、0の状態から統計検定2級に合格したいって方のために、分かりやすさをモットーに解説していきます。

今回は母分散の推定です。前に母平均の推定をやったと思いますが、今回は母分散です。
大事なポイントとして、母平均が分かっている場合と分からない場合でやり方が違いますので、その点も詳しく解説します。

 

 

母分散の区間推定:母平均が分かっている場合

今までに、

  • 母平均の区間推定
  • 母比率の推定

をやりましたが、それと同じように母分散の区間推定を行うことができます。
まずは、母平均が分かっている場合の方法を見ていきましょう。

また、前回やったカイ2乗分布の知識が必要ですので、その点が良く分からないという方はコチラの講座からどうぞ!

 

母分散の推定方法

では実際に、母平均が分かっている場合の母分散の95%信頼区間の推定方法を教えます。
主な流れとしては以下の通りです。

  • 母平均$μ$の正規分布にしたがう母集団から、$k$個の標本を抽出する。
  • $k$個の標本から統計量$V$を求める。(下記の式で求める)

$V=\frac{(X_1-μ)^2+(X_2-μ)^2+…+(X_k-μ)^2}{\sigma^2}$

  • 統計量$V$は、自由度$k$のカイ2乗分布に従っているので、以下の不等式が成り立つ。($a,b$は95%信頼区間の推定なので、カイ2乗分布の2.5%点と97.5%点)

$a \leqq \frac{(X_1-μ)^2+(X_2-μ)^2+…+(X_k-μ)^2}{\sigma^2} \leqq b$

  • 上記より、母分散$\sigma^2$の95%信頼区間は以下の様になる

$\frac{(X_1-μ)^2+…+(X_k-μ)^2}{b} \leqq \sigma^2 \leqq \frac{(X_1-μ)^2+…+(X_k-μ)^2}{a}$

 

 

例題

では実際に、例題をもとに求め方を見ていきましょう。

近所のパン屋さんではメロンパンが有名であった。
このメロンパンは、平均120gの正規分布に従って作られていた。
メロンパンを3個買ったとき、その重量が[123g, 119g, 125g]であったとき、綿パンの重量の母分散を95%信頼区間で求めよ。

まずは母平均120で、標本が3という事が分かっていますね!
ですので、統計量$V$を求めます。

$V=\frac{(X_1-μ)^2+(X_2-μ)^2+…+(X_k-μ)^2}{\sigma^2}$

この式に代入して求めます。

$V=\frac{(123-120)^2+(119-120)^2+(125-120)^2}{\sigma^2}$

$V=\frac{3^2+(-1)^2+5^2}{\sigma^2}$

$V=\frac{35}{\sigma^2}$

このようにして、統計量$V=\frac{35}{\sigma^2}$と言う事が分かりました。

 

次に、95%信頼区間を求めるために、以下の不等式について考えます。

下側2.5%点 $\leqq \frac{35}{\sigma^2} \leqq$ 上側2.5%点

この2つの2.5%点はカイ2乗分布表から求められるのでしたね。
自由度は3ですので、表から対応する値を見つけましょう。

 

0.005 0.025 0.05 0.95 0.975 0.995
1 0.00 0.00 0.00 3.84 5.02 7.88
2 0.01 0.05 0.10 5.99 7.38 10.60
3 0.07 0.22 0.35 7.81 9.35 12.84
4 0.21 0.48 0.71 9.49 11.14 14.86

 

表から、「0.22」と「9.35」という事が分かりました。
不等号で表すと以下になります。

$0.22 \leqq \frac{35}{\sigma^2} \leqq 9.35$

 

この不等式を解く事で、母分散の95%信頼区間を求める事ができます。

どの様に解くかというと、まずは3辺に$\sigma^2$を掛けます。

 

$0.22\sigma^2 \leqq 35 \leqq 9.35\sigma^2$

 

次に左右の不等式をそれぞれ計算します。

 

$\sigma^2 \leqq \frac{35}{0.22}$,  $\sigma^2 \geqq \frac{35}{9.35}$

->$\sigma^2 \leqq 159.09$ , $\sigma^2 \geqq 3.74$

 

これを正しい配置にしてあげると

$3.74 \leqq \sigma^2 \leqq 159.09$…答え

 

このようにして、母分散の95%信頼区間は$3.74 \leqq \sigma^2 \leqq 159.09$という事が分かりました。

 

えいせい
えいせい
母平均が分かっている場合の母分散の求め方が分かりましたね!次は母平均が分からない場合を見ていきましょう!

 

 

母分散の区間推定:母平均が分からない場合

母平均が分からない場合はどうしたら良いのでしょうか?
また、その際の母分散の区間推定のやり方は変わるのでしょうか?
そのあたりが気になる人も多いと思います。

いきなり結論を言うと、以下の2点がポイントです。

  • 母平均の代わりに標本平均を使う
  • カイ2乗分布の自由度が1減る

これだけです。
母平均が分かっている場合との違いはこの2点だけですので、非常にシンプルですね!

 

例題

ではさっそく例題を基に解き方を見ていきましょう。

ある工場でTシャツを作っていました。
その中で無作為に5枚Tシャツを選び重量を測ったところ、

[250g,  252g,  246g, 251g, 248g]

であった。
このTシャツの重量が正規分布に従うとき、母分散を95%信頼区間で推定せよ。

母平均の情報が無いパターンです。
さっそく解いていきます。

 

統計量Wを求める

前回は以下の式から統計量$V$を求めたと思います。

$V=\frac{(X_1-μ)^2+(X_2-μ)^2+…+(X_k-μ)^2}{\sigma^2}$

しかし、今回は母平均$μ$が分かっていません。
ですので、標本平均$\bar{X}$を使って統計量$W$を求めます。

$W=\frac{(X_1-\bar{X})^2+(X_2-\bar{X})^2+…+(X_k-\bar{X})^2}{\sigma^2}$

まずは標本平均$\bar{X}$を求めましょう。

 

$\bar{X}=\frac{250+252+245g+251g+247}{5}=249$

標本平均は249という事が分かりました。
これで、統計量$W$を求められますね。

 

$W=\frac{(250-249)^2+(252-249)^2+(245-249)^2+(251-249)^2+(247-249)^2}{\sigma^2}=\frac{34}{\sigma^2}$

 

ここで大事なポイントとして、この値は自由度$5$のカイ2乗分布に従うのではなく、自由度$5-1=4$のカイ2乗分布に従う事です。

えいせい
えいせい
最初にカイ2乗分布の自由度が1減るといったのはこのことです!

 

ですので、カイ2乗分布表から自由度$4$の2.5%点と97.5%点に対応する値を探します。

0.005 0.025 0.05 0.95 0.975 0.995
1 0.00 0.00 0.00 3.84 5.02 7.88
2 0.01 0.05 0.10 5.99 7.38 10.60
3 0.07 0.22 0.35 7.81 9.35 12.84
4 0.21 0.48 0.71 9.49 11.14 14.86
5 0.41 0.83 1.15 11.07 12.83 16.75

「0.83」と「12.83」という事が分かりました。
この値と先ほどの統計量$W$から95%の確率で以下の不等式が成り立ちますね!

$0.83\leqq \frac{34}{\sigma^2} \leqq 12.83$

 

この不等式を解く事で母分散の95%信頼区間を求める事ができます。

$0.83\leqq \frac{34}{\sigma^2} \leqq 12.83$

3辺に$\sigma^2$を掛けます。

 

-> $0.83\sigma^2 \leqq 34 \leqq 12.83 \sigma^2$

-> $\sigma^2 \leqq \frac{34}{0.83}$、 $\sigma^2 \geqq \frac{34}{12.83}$

-> $\sigma^2 \leqq 40.96$、 $\sigma^2 \geqq 2.65$

これを正しい不等式の形にすると

-> $2.65 \leqq \sigma^2 \leqq 40.96$…答え

この様にして、母平均が分からない場合でも母分散の95%信頼区間を求める事ができます。

まとめ

最後に、母平均が分からない場合の母分散の95%信頼区間の求め方のまとめです。

  • 標本平均$\bar{X}$を求める
  • 下記の式から統計量$W$を求める

$W=\frac{(X_1-\bar{X})^2+(X_2-\bar{X})^2+…+(X_k-\bar{X})^2}{\sigma^2}$

  • 自由度$k-1$をしたカイ2乗分布表から%点a,bを求める
  • 下記の不等式の形にして解く

$a \leqq W \leqq b$

 

 

練習問題

カイ2乗分布表

0.005 0.025 0.05 0.95 0.975 0.995
1 0.00 0.00 0.00 3.84 5.02 7.88
2 0.01 0.05 0.10 5.99 7.38 10.60
3 0.07 0.22 0.35 7.81 9.35 12.84
4 0.21 0.48 0.71 9.49 11.14 14.86
5 0.41 0.83 1.15 11.07 12.83 16.75
6 0.68 1.24 1.64 12.59 14.45 18.55
7 0.99 1.69 2.17 14.07 16.01 20.28
8 1.34 2.18 2.73 15.51 17.53 21.95
9 1.73 2.70 3.33 16.92 19.02 23.59
10 2.16 3.25 3.94 18.31 20.48 25.19

ある中学校の男子生徒3人を無作為に選び、身長を測ったところ(165cm, 162cm, 168cm)であった。身長が正規分布に従うとき、その母分散を95%信頼区間で推定せよ。

答え:$2.44 \leqq \sigma^2 \leqq 360$

 

まずは標本平均を求めます。

$\bar{X}=\frac{165+162+168}{3}=165$ 

 

次に統計量$W$を求めます。

$W=\frac{(165-165)^2+(162-165)^2+(168-165)^2}{\sigma^2}=\frac{18}{\sigma^2}$

 

自由度$3-1=2$のカイ2乗分布の2.5%点と97.5%点をカイ2乗分布標から探すと、
「0.05」と「7.38」ですので、次の不等式を解きます。

 

$0.05 \leqq \frac{18}{\sigma^2} \leqq 7.38 $

$0.05 \sigma^2 \leqq 18 \leqq 7.38\sigma^2$

$\sigma^2 \leqq \frac{18}{0.05}=360$、 $\sigma^2 \leqq \frac{18}{7.38}=2.44$

$2.44 \leqq \sigma^2 \leqq 360$

 

 

 

Work illustrations by Storyset

 

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