この講座の対象者は以下の方を想定しています。
- 数学は中学レベルしか分からないけど統計検定2級に合格したい
- どの参考書を見ても数式だらけで理解できない
- 確率の乗法定理ってイマイチ分からない
- 確率に条件なんてつけられるの?
この講座では特に、0の状態から統計検定2級に合格したいって方のために、分かりやすさをモットーに解説していきます。
今回は確率の中級編として、確率の乗法定理と条件付き確率につてい学んでいきましょう!
統計検定2級では出題率の高い範囲ですので、しっかりと覚えて確実に得点に繋げていきましょう。
確率の乗法定理とは?

確率の乗法定理とは、2つの事象AとBが同時に起こる確率Pは、Aが起こる確率とBが起こる確率の積で求められる定理です。
例えば、↓のような問題を解けます。
「くじが10枚あり、そのうち当たりは4枚入っています。A君とB君が順番にひいた時、2人とも当たりをひく確率を求めなさい。」
前に学んだ独立試行の場合は、1回目の結果が2回目の確率に影響を及ぼさないパターンでした。
しかし今回の場合は、1回目にくじをひく事で、2回目以降のくじの枚数が減り、確率に影響を及ぼします。
この様な場合の計算方法を見ていきましょう。
確率の乗法定理の公式
$P(A \cap B)=P(A)P_A(B)$
この式を使えば求める事ができます。
一見難しそうですが、ただ掛け算をすれば良いだけなので簡単です。
まずはそれぞれの記号の解説です。
- $P(A \cap B)$:前にやった「AかつB」を表しています。
- $P(A)$:事象Aの確率
- $P_A(B)$:事象Aが起こったという条件のもとで事象Bが起こる確率
この様な意味になっています。
では先ほどの例題、「くじが10枚あり、そのうち当たりは4枚入っています。A君とB君が順番にひいた時、2人とも当たりをひく確率を求めなさい。」にあてはめて考えてみましょう。
- $P(A)$はA君がくじを引き10枚の中から4枚ある当たりを引く確率ですので、$\frac{4}{10}$です。
- $P_A(B)$はA君が当たりくじを引いたという条件のもと、B君が当たりをひく確率です。当たりくじが1枚減っていますので、$\frac{3}{9}$です。
これらをもとに計算してみましょう。
$P(A \cap B)=\frac{4}{10} × \frac{3}{9}= \frac{2}{15}=0.1333……$
A君B君ともに当たりを引く確率は0.1333…という事が分かりました。
条件付き確率
続いて条件付き確率について解説します。
実は条件付き確率は前のセクションで既に出てきています。
$P_A(B)$
↑この式を既に見ていると思います。
これは、「Aという条件のもとでBが起こる確率」を表しており、まさに条件付の確率ですね。
また、資料によっては↓のように表すところもあります。
意味は一緒で、Aという条件のもとでBが起こる確率を示しています。
$P(B|A)$
例えば、
「ある40人のクラスで、男子生徒は25人、女子生徒は15人である。また塾に通っている生徒は男子10人で、女子生徒は8人である。無作為に1人選んだ生徒が男子である場合、その生徒が塾にも通っている確率を求めよ。」
この様な問題を解いてみましょう。
条件付き確率の公式
$P_A(B)=\frac{P(A \cap B)}{P(A)}$
この公式を使う事で解く事ができます。
「また覚えなきゃいけないの~!」っと思うかもしれませんが、実はこの公式は確率の乗法定理を展開させただけなのです。
実際にやってみましょう。
$P(A \cap B)=P(A)P_A(B)$
$\frac{P(A \cap B)}{P(A)} = P_A(B)$
$P_A(B)=\frac{P(A \cap B)}{P(A)}$ ←条件付確率の公式
統計検定の試験ではこの展開の知識が必要な問がでてきますので、しっかりと押さえておきましょう。
では実際に公式を使って先ほどの問題を解いてみましょう。
「ある40人のクラスで、男子生徒は25人、女子生徒は15人である。また塾に通っている生徒は男子10人で、女子生徒は8人である。無作為に1人選んだ生徒が男子である場合、その生徒が塾にも通っている確率を求めよ。」
まず、$P(A)$(事象Aの確率)を求めます。
この場合の事象Aは、1人選んだ生徒が男子である場合の確率ですので、↓で求められます。
$P(A) = \frac{25}{40} = \frac{5}{8}$
次に、$P(A \cap B)$つまり$P(AかつB)$を求めます。
これは、男子かつ塾に通っている確率です。(これは条件付確率では無くAND条件ですね。)
問題文から男子で塾に通っている生徒は10人という事が分かるので、クラス全体の人数40を使い↓の式から求める事ができます。
$P(A \cap B) = \frac{10}{40}=\frac{1}{4}$
では最後に公式にあてはめましょう。
$P_A(B) = \frac{\frac{1}{4}}{\frac{5}{8}}=\frac{1×8}{4×5}=\frac{8}{20}=\frac{2}{5}$
このように、答えが$\frac{2}{5}$つまり$0.4$だという事が分かりました。
独立事象の乗法定理
ここで更に一歩進みます。
少し複雑になるので、ゆっくり読み進めましょう!
まず今回の「1人選んだ生徒が男子である場合、その生徒が塾にも通っている確率」である$P_A(B)$は、塾に通っている確率(条件無し)である$P(B)$と、確率が異なります。
$P(B)$は、クラス40人中18人塾に通っているので、まとめると↓になります。
- $P_A(B)$:$\frac{2}{5}$
- $P(B)$:$\frac{18}{40}=\frac{9}{20}$
このように、確率が異なっていますね!
そりゃ当たり前ですね、事象Aという条件がある$P_A(B)$と、$P(B)$は事象Aが起ころうが起こらなかろうが、確率は変化しないですからね。
このように、
事象Aによって事象Bの確率が変わる場合、独立事象ではありません。
逆に、$P_A(B)=P(B)$となるように、事象Aに関係なく事象Bの確率が同じ場合は独立しているのです。
独立の証明
例えば、クラスの男女比率が同じ場合のケースを見てみましょう。
「ある40人のクラスで、男子生徒は25人、女子生徒は15人である。また塾に通っている生徒は男子10人で、女子生徒は6人である。無作為に1人選んだ生徒が男子である場合、その生徒が塾にも通っている確率を求めよ。」
※赤字の箇所が変更点です。
この場合の$P_A(B)$と$P(B)$の確率を見てみましょう。
まず$P(A)$と$P(A \cap B)$を求めます。
$P(A) = \frac{25}{40} = \frac{5}{8}$
$P(A \cap B) = \frac{10}{40}=\frac{1}{4}$
これをもとに公式にあてはめます。
$P_A(B) = \frac{\frac{1}{4}}{\frac{5}{8}}=\frac{1×8}{4×5}=\frac{8}{20}=\frac{2}{5}$
$P_A(B)$が$\frac{2}{5}$という事が分かりました。
次に$P(B)$を求めます。40人の中で塾に通っている生徒の数なので、男子の10人と女子の6人を足して↓のように計算します。
$P(B)=\frac{16}{40}=\frac{2}{5}$
この様な、結果になりました。
驚きですね、$P_A(B)$と$P(B)$の確率が一緒です。
この結果から、事象Aと事象Bは独立していると言えるのです。
$P_A(B)=P(B)$ :事象Aと事象Bが互いに独立している。
独立事象の乗法定理とは?
まず、最初にやったただの情報定理の式を見返しましょう
$P(A \cap B)=P(A)P_A(B)$
これでしたね。
ただよく見ると、$P_A(B)$があり、独立している場合は$P(B)$と置き換えても大丈夫でした。
このように、事象Aと事象Bが互いに独立しているとき、↓の式が成り立ちます。
$P(A \cap B)=P(A)P(B)$
これを独立事象の乗法定理といいます。
練習問題
①
答え:$\frac{1}{10}$
確率の乗法定理を使い、以下のように求めます。
$P(A \cap B)=P(A)P_A(B)$
$P(A) = \frac{2}{5}$
$P_A(B) = \frac{1}{4}$
$P(A \cap b) = \frac{2}{5} × \frac{1}{4} =\frac{1}{10}$
②
これは良く見る問題ですが、理解度を測るのに非常に素晴らしい問題です。
答え:$\frac{1}{3}$
条件付確率で求められそうですね。
$P_A(B)=\frac{P(A \cap B)}{P(A)}$
まずは子供の組合せを考えましょう。
[男、男][男、女][女、男][女、女]
この4通りがあります。
まず事象Aである、すくなくとも一人が男の子のパターンは、上記の組合せの中で3通りあります。ですので、
$P(A) = \frac{3}{4}$
です。つづいて事象Bである2人とも男場合です。
$P(A \cap B)$の確率を求めるのですが、上記の組合わせの中で、2人も男の子の組合わせは1つだけです。ですので、
$P(A \cap B) = \frac{1}{4}$
となります。最後に公式にあてはめます。
$P_A(B)=\frac{\frac{1}{4}}{\frac{3}{4}}=\frac{1×4}{4×3}=\frac{1}{3}$
③
答え:独立である
独立である条件としては、
$P(AかつB)=P(A)P(B)$
が成り立てば良いのでした。
まずは↓の3点を求めましょう。
- $P(AかつB)$
- $P(A)$
- $P(B)$
$P(AかつB)$は、男子生徒かつ部活に入っている生徒数なので、
$P(AかつB)=\frac{15}{50}=\frac{3}{10}$
です。次に$P(A)$と$P(B)$を求めます。
$P(A)=\frac{30}{50}=\frac{3}{5}$
$P(B)=\frac{25}{50}=\frac{1}{2}$
という事が分かりました。
$P(AかつB)=P(A)P(B)$が成り立つか確認してみましょう。
$P(AかつB)=\frac{3}{5}×\frac{1}{2}=\frac{3}{10}$
という事で、上記で求めた$P(AかつB)=\frac{3}{10}$とイコールになり、式がなりたつので独立だと分かりました。

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